アレックス三部作以来、8年の沈黙を破って封切られたキャラクス監督作品。この作品によってキャラクスは再び現在進行形の映画人となった。ほぼ固まりつつあったキャラクスに対する僕の評価は溶解する。……JLGからの逃走路として彼に残されていたのは、愛だった。愛という個人的なものによって普遍的な価値の柵からの逃走を描くことができるはずだった。しかし、その逃走先に待っていたのは、限りない混沌であった。混沌の中でもがき苦しむ彼自身の今の状況を、素直に映画の中に描いて見せたというのが、この映画を観た僕の正直な感想だ。彼と同じように、この作品も非常に純粋で、負への直進性を持っている。彼は寡作の人だ。でもたくさんつくることで道が見えてくるということもあるはず。騒音芸術の一群が出演していたシーンはよかったかな。
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監督:レオス・カラックス
撮影:エリック・ゴーティエ
原作:ハーマン・メルヴィル『ピエール』
音楽:スコット・ウォーカー
出演:ギョーム・ドパルデュー、カテリーナ・ゴルベワ、カトリーヌ・ドヌーヴ、デルフィーヌ・シュイヨー
1999年/フランス/125分/カラー