ゴダール『はなればなれに』

cinema
2001.03.27

原題は『徒党』。なぜ今まで日本で一般に公開されなかったのかが不思議なくらいポップな映画。タランティーノが、アニエス・Bが、ヴェンダースが絶賛するなどカルト的な人気を誇る映画でもある。ベンヤミンが言っていたキッチュと前衛の幸福な融合をこれほど感じさせてくれる映画もそうないのではないかと思う。JLGは、この作品を失敗作であると言っており、また、私もそれに同意しないでもない。彼の運動神経や卓越した身体感覚は明らかだが、脱構築が形式化(非物語が物語化)されてしまった観は否めない。アンナ・カリーナが、あるいはミシェル・ルグランがそうさせてしまったのかもしれないが、そもそもJLGにはこのようなキッチュさがあるのであって、JLGだけを擁護することはできない。それはいわばアマチュアリズムと通底しており、だが、私はむしろそのようなアマチュアリズムに賛同する。即興演出に長けたJLGが、さらに早く撮ることを考えれば、このような作品になるのかもしれない。おそらくこの映画は同時期のセーヌ左岸派、ジャック・ドゥミの影響もあると思われ、実際、劇中で、『シェルブールの雨傘』の引用(ルグランの音楽)がある。

ともかく、おもしろい、というほかない。この映画をきっかけに「映画」を観る人が増えることを願う。恋人同士で観にいくべき映画かもしれない。

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監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
原作:ドロレス&バート・ヒッチェンス『Fool’s Gold』
撮影:ラウル・クタール
音楽:ミシェル・ルグラン
編集:フランソワーズ・コラン/アニエス・ギュモ
録音:アントワーヌ・ボンファンティ/ルネ・ルヴェール
製作主任:フィリップ・デュサール
出演:アンナ・カリーナ(オディール・モノー)、サミー・フレイ(フランツ)、クロード・ブラッスール(アルチュール・ランボー)、ルイザ・コルパン、シャンタル・ダルジェ、エルネスト・マンゼール、ダニエル・ジラール、ミシェル・セゲール、ジョルジュ・スタケ、ミシェル・ドライユ、クロード・マコフスキ、ピーター・カソヴィッツ、ジャン=クロード・レモルー、ジョジョ氏
フランス/97分/白黒/スタンダード

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