ウエスト・コーストから産声をあげ、1971年にリーダー、ジム・モリスンが急死するまであらゆる面で華々しく活動を繰り広げた伝説的バンド、ドアーズの記念すべきデビュー作。このバンドの特徴は、やはりジム・モリスンの「悪魔的な」歌声と、レイ・マンザレクの左手がこのバンドのベースになるというオルガンサウンドにある。
とはいえ、われわれが真に楽しむべきは、そのドミソぶりである。当時のクラシカルな音楽のある潮流において、過剰に複雑化し、あるいは超コード化した和声学は、次第に原点回帰というべきドミソの和音を嗜好しはじめていた。彼らの登場は、その時期とちょうど合致しており、それゆえあらゆる階層において「ロック」は、拍車をかけられたように流行していた。そんななかから、まさに特異点として登場したのが、ドアーズである。一般的にいって、ヴォーカルのジム・モリスンの、映画にもなった伝説めいた人生が、ドアーズを、今日においてもなお影響力をもった存在にせしめているのだと思うし、またもちろん、ジム・モリスンの詩人としての才能も素晴らしいものがあると思うのだが、純粋に音楽を聴いても、笑いをこらえられないような味わいがある。特にオルガンを弾きまくるレイ・マンザレクの、おそらくはブルースを聴いて育ったということがよくわかる、それにもましてわかりやすいプレイ振りには感動を禁じえない。感動というと少し大袈裟になるのだが、そう、なんとも言えずいいのだ。ダークで、クールで、スタイリッシュで、かつ、牧歌的(笑)。ぼくにとって、エレクトリック・オルガンのトニックは、こういう音である。これが、ロックでしょう。いや、いいね、ほんと。ロックをまじめにやるのもいいけど、少なくともぼくにとっては笑いながら楽しむものです。
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1967年/elektra/AMCY-3040 作詞・作曲:ドアーズ
ジム・モリスン(Vo)、レイ・マンザレク(Organ, Piano, Ba)、ジョン・デンズモア(Dr)、ロビー・クリーガー(G)
M1:Break On Through(To The Other Side), M2:Soul Kitchen, M3:The Crystal Ship, M4:Twentieth Century Fox, M5:Alabama Song(Whisky Bar), M6:Light My Fire, M7:Back Door Man, M8:I Locked At You, M9:End Of The Night, M10:Take It As It Comes, M11:The End