装幀がアマゾンにアップされています。前にもすこし触れましたが、奥定泰之さんのお仕事です。送られてきたPDFファイルを開けたときの感動が思い出されます。すごく綺麗な装幀で、本当、プロは違うなあと思ったものです。フォントの配置からなにから、いろいろと細かい部分の配慮がすごく伝わってきました。指の先の先まで神経が行き届いている、というか。帯の文字色もいい感じです。永滝さんに考えていただいたキャッチがすごく映えていると思います。二案つくっていただいて、どちらかを選ぶ、という感じだったのですが、どちらも本当にすばらしかった。みた瞬間に、これは悩むな、ということがわかったから、あまり深く考えないようにぱっと選んじゃったのですが、案の定、決めたあとでいろいろベッドのなかでもんどりうっておりました。お礼をいう機会がなかなかないのですが、ここをご覧になっているという噂も聞きましたので、本当にありがとうございました。
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ところで、最近は教育現場で、円周率が3から3.14に戻っているそうですね。それは本当によかった。小さい頃、円の面積をこういう風にイメージしたことを覚えています。つまり、円がすっぽり納まる正方形をイメージすると、だいたい、半径×半径の正方形を四つ並べた状態に等しい。で、たしかに、四つよりは、円の面積は小さい。でも、三つよりは大きそうだな、だからだいたい3.14なんだな、と。逆にいえば、ゆとり教育時代、円の面積は、半径×半径の正方形三つ分と等しい、という驚異的に単純な計算をやらせていたことになります。つまり、円周率の「3.14」という言葉の意味をまったく理解せずに、たんに3.14という数値と考えて、これを省略したわけですね。これで円の面積が表現できるわけがない。「半径×半径×3」では、たんに半径と同じ長さの辺をもった正方形が三つできるだけなのです。要するに、この表現だと、円が四角いのです!
本来のゆとり教育の趣旨からいえば、3.14をただ覚えこませるのではなく、なんで3.14…になるのかを考えさせることが重要だったはずです。しかし、「ゆとり教育」の意味を理解せずに、たんに「ゆとり」を時間的な数値を意味していると考えて、教育時間を減らすことにしたわけです。要するに、円周率が3になるのは、そもそもゆとり教育の意味を履き違えていた時点で、決まっていたことだったのでしょう。
ちなみに、それが数学的に正しいのかどうかは知りませんが、とにかく勝手に上のように円周率の意味を考えていたから、円周率をたくさん口ずさむと、円がどんどん綺麗になっていく気がして、それがすごく好きでした。一桁進むたびに、たんなる三つの正方形が、丸っこくなっていく。というわけで、いまだに小学二年生のときに覚えた50桁ほど円周率を口ずさむことができるのです(覚えた最大の理由はクラスの男子で授業そっちのけで競争になったからだと思いますが)。3.14159265358979323846264338327950288419716939937510……。こんなことをやっていたから数学ができなかったんでしょうけれど。
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さて、なんで円周率の話になったのかはわかりません。が、たぶん、奥定さんの「神経の行き届いた」装幀をみていて、なんとなく円周率のことを思い出したのだと思います。